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M&Aと社会保険手続き。
会社合併時に気を付けるべきポイントを社労士がまとめました。

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M&Aと社会保険手続きに関して
会社合併時に注意すべき
ポイントを解説します。

会社のM&Aにあたって、人事担当者における役割の一つが、従業員に不安や混乱が生じることがないよう丁寧な対応と円滑な手続きを行うことです。譲渡企業であるか、譲受企業であるかによっても、その求められる役割が異なりますが、社会保険などに関する手続きは、決められたステップで確実に手続きを進めなければならないのは同じです。

今回は、会社がM&Aにより合併するとき、従業員のために必要な社会保険手続きをどのように行えばよいのか、気をつけたいポイントをM&Aに詳しい社労士が解説していきます。

目次
この記事の監修

社会保険労務士法人とうかい
社会保険労務士 小栗多喜子

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

主な出演メディア
NHK「あさイチ」

中日新聞
船井総研のYouTubeチャンネル「Funai online」


社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

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M&A(合併)時に必要な従業員の
社会保険手続きとは?

M&A(合併)時にはどのような
手続きが必要となるの
でしょうか。

企業を取り巻く環境変化が大きい昨今、M&Aによって会社合併することは、珍しくありません。大規模な企業がベンチャー企業を買収するケース、事業承継により会社を買ってもらうケース、事業のシナジーを狙って合併するケース、さまざまなケースがあります。合併目的は異なっていても、これまで別々の会社を1つに合併していくには、非常に大きな労力が必要なことに変わらないでしょう。

合併とは?

合併とは、複数の会社を1つの会社に統合するためのM&Aの手法です。「吸収合併」と「新設合併」の2通りがあります。

・「吸収合併」

買収する側の会社が、買収される側の会社の権利や義務を引き継ぐ

・「新設合併」

合併に関わるすべての会社が一旦解散したうえで、別の法人を新たに設立し、その新会社が権利や義務を引き継ぐ

 

ここでは合併の際における、社会保険などの手続きについて確認してみましょう。

 

合併時に必要な手続き

  吸収合併

新設合併

買収する側の会社

(存続会社)

買収される側の会社

(消滅会社)

新設会社
社会保険

・社会保険資格取得届

・被扶養者異動届

・国民年金第3号被保険者関係届

 

・社会保険資格喪失届

・適用事業所全喪届

・新規適用届

・その他、消滅会社同様の手続き

・その他存続会社同様の手続き

雇用保険

・同一事業主認定手続き

・雇用保険事業主事業所各種変更届

・雇用保険事業所廃止届

・同一事業主認定手続き

労働保険 ・労働保険成立、一括申請

・労働保険確定保険料申告書

・労働保険料還付請求書(還付がある場合)

必要

書類等

・合併契約書

・新旧法人登記簿謄本

・雇用保険被保険者名簿

・新旧事業実態証明書

・健康保険証(被扶養者分含む)

・解散登記の記載がある登記簿謄本

・雇用保険被保険者名簿

・合併契約書

・新旧事業実態証明書

・合併契約書

・旧法人登記簿謄本

・雇用保険被保険者名簿

・旧事業実態証明書

・旧事業会社および新会社の株主総会議事録

※必要書類については、別途資料を求められる場合もあります。予め、管轄の年金事務所やハローワーク、労働局へ確認しておくことをおすすめします。

 
合併の場合、従業員すべての手続きが必要になってきます。買収される側(消滅会社)では、被扶養者を含め、健康保険証の回収作業などもありますので、漏れのないよう計画的に進めていく必要があります。買収する側(存続会社)としても、新たに資格取得をする手続きが遅れると、新たな健康保険証の発行などが遅れ、従業員に影響を与えてしまいますので、事前準備が重要になってきます。

M&A(合併)の社会保険手続き。
買収する側(存続会社)が気をつけたいポイント

社会保険(健康保険/厚生年金保険)

「吸収合併」で、買収する側(存続会社)は、資格取得届を提出することで、新たに受け入れた従業員の健康保険被保険者証を発行し、従業員へ渡すといったプロセスが発生します。この手続きが遅れると、従業員が病気やケガで医療機関を受診する際に困ってしまいます。保険証の発送は、日本年金機構での審査確認(登録)完了日の2営業日後とされています。しかし、4月など新卒入社の多い時期などは、発行までに1か月以上かかるケースもあるようです。合併時期がこの期間と重なると、従業員への保険証受け渡しが大きくずれ込む可能性があります。スムーズに手続きが行えるよう、予め手続きに必要な情報の収集などを行なっておく方がよいでしょう。

もし健康保険証が届く前に、従業員が医療機関を受診した場合には、一旦自己負担で全額支払う必要があります。その場合には、あとから払い戻し「療養費(立て替え払い)」の手続きを確認しておいたほうがよいでしょう。

「新設合併」の場合にも同様に、資格取得届を提出し、新たな健康保険証を発行してもらわねばなりません。ただ、「新設合併」の場合には、新たな適用事業所である届「新規適用届」の提出も必要になってきます。この新規適用にあたっては、新設会社の登記簿謄本が必要なため、法務局での登記手続きが完了しない限り、手続きが進みません。登記完了後にすぐ社会保険の手続き・届出ができるよう、書類の準備を進めておきましょう。

また、健保組合に加入するケースでは、取扱いが異なる場合もありますので、注意が必要です。

雇用保険

雇用保険では、買収する側(存続会社)が、被保険者の同一事業主認定手続きを行います。健康保険・厚生年金保険のように、買収される側(消滅会社)で資格喪失をし、買収する側(存続会社)で資格取得をするといったプロセスを踏むわけではありません。なぜなら、合併によって、一旦被保険者期間がリセットしてしまうと、失業等給付や高年齢雇用継続給付などの給付の要件を満たさなくなってしまう場合があるからです。これら失業等給付や高年齢雇用継続給付などは、雇用保険の一定の被保険者期間を要件としています。そこで、M&A合併によって従業員が動く場合には、不利益が生じないような手続きが必要になるのです。それが被保険者の認定手続きというわけです。買収される側(消滅会社)が買収される側(存続会社)に一本化され、同一事業主だとみなされる手続きです。

その他、買収する側(存続会社)が、買収される側(消滅会社)の事業を引き続き継続するか、しないかによっても、手続きが少し異なります。そのまま事業を引き継ぐ場合には、会社名や事業主名が変更になる旨の手続きが必要になります。合併後に事業を引き継がない場合には、「新旧事業実態証明書」といった事業の実態を証明する必要が生じます。

労働保険

労働保険では、買収する側(存続会社)の事業が、買収する側(存続会社)と同一の場合には、労働保険成立の手続きと継続事業一括手続きが必要です。また、合併によって、労働保険料が大きく増加することが見込まれる場合には、増加概算保険料の申告と納付が必要です。合併によって賃金総額が2倍以上、また概算保険料が13万円以上増加する場合が、増加概算保険料の目安です。

労災保険については、合併後の事業の種類が同一であるかは、保険料率にも影響しますので、しっかり確認しておきます。

M&A(合併)の社会保険手続き。
買収される側(消滅会社)が気をつけたいポイント

社会保険(健康保険/厚生年金保険)

合併で買収される側(消滅会社)では、適用事業所全喪届を提出します。さらに、従業員の被保険者資格の喪失手続きを行います。忘れてならないのが、被保険者全員の健康保険被保険証を回収し、返却するということです。扶養者の分も含め、返却が必要ですので、意外と手間と時間がかかります。

雇用保険

合併で買収する側(存続会社)、買収される側(消滅会社)ともに、「同一事業主の認定手続き」を行うことになります。合併契約書や登記簿謄本、株主総会議事録や取締役会議事録、存続会社に移籍する従業員の雇用保険被保険者名簿など、提出する書類が多くあります。予め必要書類をハローワークに確認しておいたほうがよいでしょう。実際に手続きをする段になって、書類が揃っておらず、慌てふためくといったことがないよう、注意してください。

労働保険

買収される側(消滅会社)では、労働保険の廃止の手続きと労働保険料の精算を行う必要があります。廃止届といった書類ではなく、「労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書」を所轄の労働基準監督署に提出することで、労働保険料の清算を行います。

不足があれば、追加で労働保険料の納付を行い、反対に還付が発生した場合には、「労働保険料還付請求書」を提出します。営業所や支店などを複数ある場合など、手続きが煩雑になりがちなので、もれなくしっかりと行います。

M&A(合併)時の人事労務デューデリジェンスとは?

人事労務デューデリジェンスとはどのようなものでしょうか
詳しく解説していきます。

M&A(合併)において、買い手側としては、非常に大きな買い物をすることとなります。当然ながら、買うに値する企業であるのか、事業にどんなシナジーをもたらすのか、もちろん買った後にトラブルになるような火種はないか、しっかりと見極めたいものでしょう。とくに人事労務に関する事項は、軽視すると大きな債務を抱えることにもなりかねません。買収後に未払残業問題が持ち上がった、長時間残業が頻発している、などが発覚し、労使トラブルに発展する可能性も秘めています。買収後に訴訟にでもなれば、その対応のためのコストや労力は、大きな負担であるとともに、企業価値を著しく下げてしまうものでしょう。

このようなリスクを未然に防ぐためにも、人事労務デューデリジェンスを行うことをおすすめしています。売却企業の組織風土や人事制度、給与などの待遇、福利厚生といった視点で、詳細にリサーチしていきます。これまでの労使トラブルも把握します。もちろん、社会保険の未加入などがないかについても洗い出しを行います。最近では、買収される側の企業も、より企業価値をアピールするための手段として、人事労務デューデリジェンスを活用するケースも増えています。

人事労務に関しては、関連する法律も多く、専門家の力が不可欠です。そこで社会保険労務士がM&A(合併)を検討している会社の人事労務デューデリジェンスをサポートするケースが多いのです。

M&A(合併)に詳しい社会保険労務士であれば、合併に関する社会保険手続きの経験や知識も豊富です。膨大な事務処理と限られた時間のなかで、社会保険の手続きを行うには、こうしたM&A(合併)の人事労務デューデリジェンスや手続きに実績のあるサポート先に協力してもらうことも検討してみるとよいでしょう。

 

まとめ

M&Aや人事労務デューデリジェンスの
お悩みならとうかいにお任せください。

大規模なM&A(合併)となると、その従業員数も多く、人事労務担当者だけでは社会保険手続きが回らないケースも考えられます。とはいえ、これらの手続きは、全従業員分の届出が必要となりますので、従業員が多い会社、日頃紙書類で手続きを行なっている場合などは、手続きのサポート先も検討してみることをおすすめします。合併時の人事担当者は、社会保険手続きに限らず、あらゆる施策に関わっていたり、膨大な書類と格闘していることでしょう。社会保険の手続きを正確に・期日通りに行うことが可能かどうか、必要な人員体制であるか、アウトソーシングの活用なども含め、計画立てて進めていくことをおすすめします。

当社ではM&A(合併)や人事労務デューデリジェンスに詳しい社労士が揃っています。買収を検討している会社、反対に売却先を検討されている会社、どちらのご相談もお受けしています。お気軽にご相談ください。

 

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